MKG
彼は今、切羽詰まっている。
現在彼は地元で、毎年夏に行っているボランティア活動に全力を挙げている。
彼の所属する“毎年こどもたちをキャンプに引率するグループ”(通称:MKG)は高校生以上の若者によって形成されるNPOである。
しかし、その組織の実態は夏の夜の夢のごとく儚く、そんじょそこらのマカロンなんかよりもよっぽど脆い。
そのため、毎年いろんなことがギリギリで辛うじてキャンプができている、という状況が常である。
ただでさえこんな状況であるのに、今年は特に部活にバイトにと忙しい高校生・大学生が多く、キャンプ本番一週間前にしていつにも増して切羽詰まっている、というのが今の状況である。
その上、今年の全体のキャプテンであったはずの人が部活の合宿のために参加できなくなり、急遽彼が代役のキャプテンに選出された。
くじ引きによって。
そういう訳で彼は連日、彼らが「アヂト」と呼ぶそのNPOの事務局に、朝の10時から夜の10時まで篭りっきりでキャンプの準備に明け暮れているのだ。
彼は憂う。
「切羽詰まってはいるけれど、もう詰まるところまで詰まってしまった。
詰まりに詰まった“切羽”は、一体どうなってしまうんだろうか。
いきなり“ぱあん”と弾けて、全てが無に戻る、なんてことにならなければいいんやけど…」
彼は明日も、朝の9時からアヂトで作業をする予定である。
「俺がやらねば誰がやる!?」
彼は自分にそう言い聞かせることによって、募る鬱憤を準備作業に向けて昇華している。