2010-01-01から1年間の記事一覧

ネズミーSEAと毛玉たち

彼は計画休暇と祝日を利用して、めんまるさんとともにネズミーSEAへ行った。 そこではどんな夢も叶うという、魔法の国である。 別名ガンダーラ。 千葉県浦安市に位置している。 いつもは、どこへ行くのにもめんまるさんを“連れて”歩いている彼であるが、その…

パスポート争奪戦

銀行の連続休暇制度により来年2月に一週間連休がある彼は、それを利用してベトナムとカンボジアに行こうと考えている。 しかし、なかなか話が進まない。それもそのはず。 その旅行のメンバーというのが、彼と彼の大学時代のスペイン語クラスの先輩二人(大阪…

心の終着点

彼は、人生について少し考えた。 一度きりの人生である。 「少し急ぎすぎたのかもしれないな」と思った。 そうしてまた、「いや、回り道も悪くはないのかもしれない」とも思った。 彼の心の終着点はきっと、“今”を繰り返していった先にある。 しかし一方でそ…

カフェレスト・ラディッシュ

先週土曜日。 名古屋駅に着いた彼は、知多半島に住む弟と合流し、“カフェレスト・ラディッシュ”へ向かった。 ラディッシュとは、ご存知HTBの名物番組“水曜どうでしょう”のディレクターである藤村氏のお母さんとお兄さんがやっている店で、どうでしょう内にも…

田舎

知多半島の先っぽで目覚めた彼らは、朝から自転車に乗って出かけた。 時刻は8時半くらい。 近くのコンビニで朝食のおにぎりを買い、少し走るとすぐに海に出た。 海岸沿いの道は走りやすく、海は朝の陽を浴びて細かく光っている。いい天気で風もなく、弟に借…

“知らない人について行ってはいけない”

「知らない人について行くのは、能動的にも受動的にも、あまりいいことがない! 」 彼は注意を呼びかけている。 彼が名古屋へ向かう途中のことである。 大阪駅まで乗っていた電車に、“ちょっとかわいい人”が乗っていた。 それがどんなかわいさだったかという…

思い立ったが吉日主義

彼は急遽、週末に弟の住む愛知県は知多半島の先っぽを訪れることにした。 昨夜弟と電話をしていて急に思いついたのだ。 しばしば、彼は唐突な行動をする。思いつきの行動が多く、計画性のない生活だ。 といえばそれまでだが、彼はその性質を“思い立ったが吉…

哀愁トレイン

いつも使っていた駅が、なんだかもう“自分の駅”ではなくなっている。 四条に行くにも大阪に行くにも、実家に帰るのにも、よくここから緑色の電車に乗った。 いつの間にか、そこが自分の駅になっていたのだと、今になって気づいた。 学園祭からの帰り際、友人…

消息確認と秋の空

学園祭に行くため、3月に引っ越して以来初めて出身大学に来た彼は、友人Kと会う前に、“もう一つの目的”を遂行した。 それは、“音信不通の友人Hの家を訪ねる”ということである。 その友人Hと彼は在学中から仲が良かったのだが、友人Hが就職をあきらめて留年を…

中学生の切り抜け方

とうとう彼がやってしまった。 といっても、仕事におけるミスではない。 “インキー”である。 今シーズン一番の冷え込みで、厚着をした朝。 職場に着いた彼は原付からおり、手袋をとってジャケットのポケットに入れる。 ジャケットを脱ぎ、マフラーをとり、シ…

とげまる

彼は、スピッツの新しいアルバム『とげまる』を買った。アジカンやフジファブリックなど邦楽ロックが好きな彼であったが、スピッツのアルバムを買うのは今回が初めてである。シングルに関しては高校時代に2枚ほど買ったことがあり、テレビやラジオで流れる曲…

昼下がりの香ばしさ

昼下がり。 彼が机に向かってせっせと働いていると、なにやら香ばしい匂いがした。 その匂いの発生源を探すと、彼のシャツの胸ポケットだった。 彼のシャツの胸ポケットには、彼の地元の名物である“せんべい”が入っている。 それは彼の地元の、かの万葉集に…

車窓の思索

今日、彼は銀行員として必ず受けなければならない検定試験を受けた。 勉強が嫌いな彼であるが、銀行員である以上避けては通れぬ検定や資格の試験。 勉強はしたくないが、受けるからには通りたいと、彼は今回、自分でもよくやったなぁと思うくらいにきちんと…

外国送金por fabor!

どうやら、彼のいる支店は他の支店に比べて、“外国送金”が多いらしい。 なんだか二、三日に一度はあるし、多いときには一日に四件も来たこともある。 最近本部にある外為センターから異動してきた人にも、“彼の名が外為センターで有名になっている”という衝…

DOOR TO DOORの2m

DOOR TO DOORの2mを、どうやって走れというのだ。 先輩いわく、「どこの支店にも一人はいるんや、ああいう天皇みたいな客が。」 もちろん、“穏やかである”という意味の比喩ではない。 “自分勝手な”もしくは“傍若無人な”というイメージの比喩である。 早朝、…

思い立ったが東京

彼は今、東京からの帰路にて、電車に揺られている。 約12時間かけて、彼の住む町まで帰るのだ。 そもそも、彼が東京に着いたのは昨日である。 三連休なのに何故か日曜に来て月曜に帰るという不可思議な行動は、土曜は大阪で遊ぶ予定があったからにほかならな…

人事異動のワルツ

金曜日、ついに人事異動が発表になった。 上司が異動。 彼は不動。 まさかまさかの、彼が考えた最も彼にとって都合のよい結果だ。 これでもう、彼は非人道的罵声を浴びせられたり椅子の下で足を蹴られたりすることはなくなるのだ。 昼ご飯を18時頃食べなけれ…

人事異動と希望的観測

この金曜日、彼の働く銀行では大規模な人事異動が発表されるらしい。働き始めてまだ半年の彼が直接異動することはまずあり得ないが、支店のメンバーがどう変わるか、或いは変わらないかということは、彼にとってまさに死活問題である。 銀行では、春と秋に大…

飽きがこない

暑い暑いという話題に引きずられるように、夏が続いていた。 しかし、9月も半ばに差し掛かろうという今日、ふと気づいた。 夜にクーラーがいらない。 窓を開ければ涼しい風が入ってきて、朝方は少し寒いくらいである。 そういえば、昨日もそうだった。台風…

忘却の彼方で確実に怒られる

彼が仕事でミスをした。 上司が連休中のことである。 それによって客に迷惑がかかるといった類いのものではないが、彼の上司が最も嫌うタイプのミスであり、彼自身、なぜそんなことをしたのかと自分をぶん殴りたくなるようなミスであった。 その事実を知った…

友人K

彼と友人Kは、四条の献血ルームで成分献血をした。 彼にとっては23度目、友人Kにとっては2度目の献血である。 右腕から血が抜かれ、血漿が分離して残りが再び右腕から返ってくる。 それを四回繰り返す途中で彼は、看護師さんに、ここのところ気になってい…

余韻

お盆の土日が明け、彼が仕事に向かう。どうやらお盆休みはまだ明けていないらしい。 通勤の車が少ない。 毎年恒例のキャンプによって全身筋肉痛の彼は、自分が社会人であることを文字通り痛感しながら仕事場に着く。 今までなら、キャンプの次の日は昼過ぎま…

ゆとり。

至福の早帰り日。 帰り道で、昨日帰省してきた弟に服を買ってやる。 いい兄っぷりを遺憾無く発揮する彼。 湿った空気がゆっくり動き、空を見れば雲の切れ間から陽が差している。 悪くはない。 漫画を一冊買おうと、少し遠回り。 時間にゆとりがあるのはよい…

連日連夜

7月が、嵐のような忙しさの月末が、終わった。 連日目まぐるしく働き、水曜日は融資だけ早帰りを返上。 木曜日は遅帰りで21時までフル稼働。 自分だけ昼食をとりにいって部下たちには全くとらせる気配のない上司。 そのせいで融資課はその上司以外昼ご飯を…

23°Cumpleaños

23回目の誕生日を、彼はめんまるさんと過ごした。 彼の誕生日が運よく土曜日と重なった今年、めんまるさんはその日に休みを合わせてくれたのである。 朝、電車に乗った彼らは大阪港に向かった。 言わずと知れた大きな水族館。 彼らの目的は、愛らしい肉球の…

夏休み

朝からカンカン照りで蝉の鳴き声にも熱がこもっている、まさに夏本番の今日。 子どもたちは終業式を迎え、これまで登校中の高校生を横目に出勤していた彼もいよいよ孤独な“社会人の夏”を感じることになりそうだ。 何より、得体の知れないわくわく感が残って…

宵山リターンズ

ここ数日の激しい雨も上がり、いよいよ梅雨明けかと思われる今宵、彼は京阪電車に揺られて祇園四条の駅に降り立った。 京都では今日、祇園祭の宵山が盛大に繰り広げられている。 彼が、この宵山の京都にこっそりと潜り込むことができるかどうかは、実に危う…

内部爆発型虫歯

梅雨の合間の晴れ渡った土曜日。 彼はかねてより悩まされていた疼く奥歯をなんとかしてもらうため、歯医者へ向かった。 そして、言われた。 「これは内部でかなり広がってますね。神経にもかなりかかってるので、神経を抜かなければ。」 かくして、彼の奥歯…

暗黒時代到来

6月の異動で、彼の所属する融資課から唯一の女性が去った。 それはつまり、鬼のような上司の、唯一の心のオアシスが無くなったということだ。 さらに、後任で異動してくる人は30代半ばの男性であり、まじめで頭はいいが少し変わった人であるというなんとなく…

見下ろす外国人

朝からしとしとと雨が降る土曜日。 彼は、一週間の心身の疲れを取るべく、片手間に勉強をしながらスペイン語のトイストーリー2を観たり、弟とゲームをしたりして休んでいる。 今日は、彼が先週京都駅で目にした光景を紹介したい。 それは、彼が京都駅南の大…