教習所卒業

 教習所に通い始めて二ヵ月半、今日、彼はとうとう自動車教習所を卒業した。


 卒業検定にあたって、彼は初めはあまり緊張していなかったという。しかし、台風が近づいて天気は最悪。それに加えて、彼の前の順番であった学生風の男性が途中で歩行者を轢きそうになって検定失格になってしまい、そのショックで彼はすっかりおろおろしてしまった。
 おろおろした彼は、ギアがニュートラルのまま発車しようとしたり左折の合図を出し忘れたり、普段ならしないはずのミスをいくつか披露しながらもどうにか路上検定に合格し、所内の左折バックも一発でパスしてなんとか卒業にこぎつけたのである。


 彼は喜んでいるが、私は彼が一抹の寂しさを感じているのではないかとひそかに思っている。というのも、彼は担当の教官と仲良くなり、毎回楽しく話をしていたからである。しかしそういう出会いと別れを繰り返すのが人生ではないか。なんにせよ、一度も失敗することなく楽しく卒業できた彼はシアワセモノである。