真相

 彼が実家に帰った真相。それは、台風を呼ぶためでも台風と闘うためでもなく、参院選不在者投票をするためだった。
 彼の誕生日は7月24日。選挙の投票日がいつの間にか22日から29日に延びていたことによって彼にも投票権が与えられることとなったのである。


 朝八時半。お城の前にある商工会議所で人生初となる投票を終えた。しかも19歳で。これは貴重な経験ではないかと思う。ただ、未成年だということで別の個室に隔離され、怪しいおじさんに見守られながらの投票となったらしいのだが。


 投票を終え、2時半過ぎにはもう彼は電車に揺られていた。空はすっかり晴れ渡り、危ぶまれていた台風の上陸も免れた。考えようによっては彼が台風を遠ざけたと言えるのではないかという人もいるかもしれないが、それは買い被り過ぎである。彼の力では、せいぜい虫よけスプレーで蚊を遠ざけるのが限界だ。


 彼は祇園祭に行く人々のせいで京阪電車が混んでいることに怒りをあらわにしているが、このあと自分も京阪に乗って祇園祭に行く予定であることを棚に上げてよくまあそんな態度がとれるものだと感心する。


 今日、特に何もしていないにも関わらず既に眠い私は、風呂にでも入ってさっさと寝ることにしよう。