文化祭・下

 彼は、昨日に引き続き母校の高校の文化祭へ向かった。昼前のことである。
 実を言えば、それは彼の通う大学で後期最初の講義が行われている、まさにその時間であった。しかし彼はそんなことをものともせず、というよりそんな事実はないと信じ込むようにしながら自転車を漕ぐ足を速めた。
 
 高校に着くと彼は、これまた既に卒業している後輩と共にクラスの展示を観るなど少しばかり文化祭の雰囲気を楽しみ、図書館に二年ほど前に借りた本を返した後、社会部の展示がされていた教室の片付けを手伝ったりモノポリーをして遊んだりして後輩達と友好を深めたのだというが、彼の話ぶりから推察すると、彼の三歳下にあたる後輩は、なかなか扱いが難しいというか、まだまだ人間的に発展途上であるように思える。真面目さや、一所懸命やっていることのベクトルが少しばかりずれているのかもしれない。


 ともあれ、彼にとってはその場所はやはり懐かしく、楽しい一日を過ごせたようである。