鎌倉に着いた彼は、なんだかとても長い間旅をしてきたような気持ちになった。
グッズショップでいくつか江ノ電グッズを買い、駅前をぼんやり見渡す。
繰り出す人が溢れてはいなかったが、なにかしらの風情を感じとることができたようだ。
そして、疲れにまかせてこんなことを呟いた。
「風の日には旗になろう
君が見失わないように
雨の日には傘になろう
君が一人ぬれないように
そういうひとに、わたしはなりたい。」
何を言っているのだ。
時刻は19時。
彼は折り返しの江ノ電に乗り、ガタゴトと34分間の旅に出た。
藤沢まで。
今度は降りないで行くのだ。
夜が来たよ
さよなら旅の人