熱が出たら病院へ!
シルバーウィークの最後の日であった昨夜、彼は自室のふとんで熱にうなされていた。
学生時代最後の夏。
「すべての日に予定を入れる」
という目標を掲げて生きてきた彼の、正に夏休み最後の日が昨日である。
巷ではインフルエンザが猛威を振るっているが、どうやら彼のは疲れからくるただの扁桃炎のようだ。
普段から「ぼくはインフルエンザにはならない」と何の根拠もなく豪語している彼であるが、今回ばかりは少し焦った。
しかし、インフルエンザの症状と照らし合わせてみて「どうやら違う」と判断し、それに加味して、彼が幼少の頃よく扁桃炎になっていた経験から、「これは扁桃炎だ」と決め付けたのである。
それにしても、一人暮らしの病気は惨めである。
薬を飲むために食欲もないのに何か食べるものの準備をしなければならず、食器は片付かず、部屋は散らかり、洗濯物は山になる。
彼は朝から一人でぶるぶると震えたりやたらと暑くなって汗を垂れ流したりしながらのたうちまわっていたのだが、午後になるとのそのそと起き出して友人の家に行った。
「何をやっているのだ」
と言いたいところであるが、彼の予定がそうなっていて、彼が自分で判断しているのだからしかたがない。
こうして彼は学生時代最後の夏休みすべての日に予定を入れ、それを実行することを達成した。
そして夜、薬の効き目が切れて再びのたうつことになるのである。