雨天外出に於ける思索

 雨の日に出かけるときの人の格好は、大きく二つに分けられる。
 ひとつは、レインコートや傘を使い、鞄もビニールの袋に入れるなどして極力濡れない格好をする人
 そしてもうひとつは、衣服は法に触れない程度の必要最小限におさえ、濡れると困る荷物は一切持たないといった、なすがままに濡れるための格好をする人である。
 前者は基本的に服も荷物も濡れないですむように思えるが、傘がうっかり役割を果たすのを忘れたときの肉体的損害、そして袋の中に入り込もうとする雨粒たちの健闘によって万が一鞄が濡れてしまい、大事な書類がふにゃふにゃになってしまったときの精神的損害は非常に大きい。
 一方後者はいくら雨に濡れても大丈夫である。一見、失うものは何もないという「どんとこい」的な頼もしい方法に思えるが、実は“健康”“社会性”という非常に大切なものを失う可能性を孕んでいる。
 そもそもびしょ濡れにほぼ手ぶらでは電車にも乗りにくければ店にも入れず、仕事もできなければ講義も受けられない。もし風邪をひいてしまっては出かけることもできなくなり、本末転倒である。
 断っておくが、私は迷わず前者のスタイルを選択する人間である。傘をさしていて足が濡れただけでぷるぷる震えている私には、行動の幅も狭くリスクも大きいと思われる後者のスタイルを選択する勇気と器はない。だから、そのような男気に溢れた人々を見掛けたときにはいつも眉をひそめながら敬服の念を送っているのである。