みけいぬさん

 彼は彼女をしばしば共感的他者と呼ぶが、一方で私に彼女の話をするときには「みけいぬさん」と呼ぶことが多い。理由はわからない。
 彼に「みけいぬ」とはいったい何だと聞いてみたことがあるが、「みけいぬとはとらねこのことだ」という答えが返ってきて困った。「とらねこ」はしましまの猫であって「みけ」でも「いぬ」でもなく、全く要領を得ないまま私はそれを聞き流した。