案内人もどき

彼は、三条でみけいぬさんと待ち合わせた。
今日はみけいぬさんの古くからの友人が遊びに来ていて、京都に出て来るというから彼は頼まれもしないのに案内役をかってでたのだった。
彼は三条通りをうろうろと不審に歩き回りながらみけいぬさんたちを待った。
三回ほど寺町と河原町の間を往復した頃、彼は無事にみけいぬさんたちに会えた。
にもかかわらず、彼は不審な動きを繰り返しながら先頭に立って新京極を歩き、みけいぬさんたちを蛸薬師堂に案内したり新風館に案内したり、途中の京都文化博物館でやっていたスコットランドの銀細工展のようなものとバグパイプの演奏を聴いたりした。


新風館で休憩しているときのことである。みけいぬさんの友人が、いろいろなみせで服をみたいが、彼に迷惑ではないかというような主旨のことを言い出したので、彼は「いやいや全然構わんから、もう好きなだけどんどん行ってくれたらいいで」と即答した。
彼は、人が買い物をすることに付き合って回ることに苦痛を感じない、珍しい人間なのである。つまり、自分違う感性を持った人が、自分の知らない、もしくは一人では行けないような店に彼を連れて行ってくれることに、少なからず楽しみを覚えているのである。


彼らはまた寺町通りや新京極に戻った。そして、みけいぬさんの友人が入りたい店をたくさん回った。今まで彼が目にも留めなかった、沢山オシャレな服が並ぶ店を回ることを、みけいぬさんたちだけでなく、彼もまた楽しんだ。そして心の中で、「なんじゃこりゃ〜!高い!高い!」と憤慨した。


途中で新京極の白いオヤジの店で揚げられた骨付きの鳥肉などを食べ、みけいぬさんたちは、最終的には河原町OPAでそれぞれ気に入った服を買った。


みけいぬさんの友人を地下鉄の駅まで送り、彼らは木屋町のバーMoon Walkにておいしいカクテルを飲んだ。そして、よく歩いた一日を振り返ったのだった。