サッカ雨

彼は、西京極へサッカーの試合を観に出掛けた。
チケットが余っていると友人から誘われ、晴れたら行こうと約束していたのだ。

しかしこの日の天気はあいにくの雨模様。
午前中には警報が発令され、午後になっても断続して土砂降りが続いていた。
彼は、そんな空模様を気にしながら四条通りのホリーズカフェで宿題の追い込みにはいっていた。
ときおり窓の外に目をやると、バスの屋根に雨粒が跳ねるのが見える。
彼はアジカンの『夏の日、残像』を聴きながら机に向かう。


夕方になると奇跡的に雨は止み、雲の切れ間からは陽射しが差し込むようになった。
しかし、友人と阪急河原町で待ち合わせ、西京極に着いた頃には再び雨が。
「予報では7時頃に今日一番の雨が降るらしい」と言う友人に、「昼以上に降ることはありえない!大丈夫だ!」と彼は根拠もなく断言し、競技場に入る。
試合が始まるとそれまでぱらついていた雨も止み、彼らはこころおきなく試合を楽しんだ。


サンガは1-2で負けたが、彼らは満足した様子で競技場を出た。

直後。

彼の肩にぽつりと水滴。
木の葉に残った露が風に吹かれて落ちてきたのだろうか。
友人とそんな言葉を交わした直後、雷鳴と共に滝のような雨が降り注いだ。
慌てて傘をさす彼ら。
なかなか進まない人の列。
足元を流れ始めた川。
水没して水の溜まった靴。
雨宿りの人々。
それを横目に、駅へと急ぐ彼ら。
少しずつしか渡れない橋。
傘からまさかの雨漏り。
感覚が消えていく膝から下―。


彼らはびっちょんびっちょんになりながら、ようやく西京極駅にたどり着いた。
彼の友人は彼がレインコートも持たず、新しい靴を履いてきたことを非難し、彼もそれを後悔してはいたが、もはやそんなこともどうでもよくなるほどに凄まじい雨であった。
彼らはガッポガッポと電車に乗り込み、四条のすき家でガタガタと震えながらもしゃもしゃと牛丼を食べた。