冬のミルク

夕方。
彼は、地元に帰る電車の中から西の空を見ていた。

赤でもなく青でもないその空は、小さい頃に見たそれと何も変わっていないように思えた。

イヤホンから流れ込む『冬のミルク』は、不思議な空の色と混ざり合って静かに彼の胸を締め付けた。


夜。
彼は、近所の書店で高校時代の友人とばったり会った。

なんだか変わってしまったようにも思えるが、実は昔と全然変わっていない。

人通りのない国道を曲がると、頭の中に『記念写真』がこだまして、歌詞の内容と実際の境遇をくらべて吹き出しそうになった。


更に夜。
彼の実家では、彼の弟が風呂に入ろうとした。
そのとき風呂場に煙が立ちこめ、灯油の臭いが家中に充満し、大騒ぎになった。
壊れた給湯器をめぐって家族が混乱しているのを尻目に、彼はぼんやりと『冬のミルク』を口ずさんだ。


http://jp.youtube.com/watch?v=SgKywZctVhA

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