週末のKIJS

教育実習の始めの一週間を終え、彼は疲弊しきっている。
先生の授業を見ているのも疲れるし、来週からこの落ち着きのない中学生相手に自分が授業をするのかと思うと憂鬱になる。
水曜日くらいから朝と終わりの学活を任されるようになり、生徒の前で話すことには少しずつ慣れてきたが、奴らの世界は想像以上に狭く、深い。


彼はこの一週間、思春期真っ只中の中学生から、男女を問わずからかわれ続けた。
「先生彼女できたことないやろー」

「先生オタク?」
「先生彼女かわいい?かわいくないやろー?」
「先生山崎邦正に似てる!」


いや、似ていない。…と思う。


しかしそれはまだいい。
彼らに恋の話しを振ると急に照れたりして、彼も楽しい。

一番辛いのは、誰も何も話し掛けてくれないクラスだ。
そんなクラスに行ったとき、彼は所在無さげに教室の隅にチョコンと腰掛けて、ただ時間が過ぎるのを待っている。


来週からいよいよ、彼が授業をする。
中学生相手に彼の授業が通用するのか。
まぁしなくて当たり前なのだが、「やりたいようにやりたい」というのが彼の当面の目標である。