四条河原町の反定立

街頭でコンタクトレンズのチラシを配っている女性が、メガネをかけていた。






それは…いいのか??

もし、育毛剤の宣伝をしている人の頭がツルツルだったら、ダイエット食品の宣伝をしている人がブヨブヨだったら、きっとその商品は売れないだろう。
その見地に立てば、コンタクトレンズを宣伝している人がメガネをかけているということは、コンタクトレンズに対するメガネの優位性を暗にアピールし、コンタクトレンズを批判することになるのではないか。

さらに考えれば、もしやこれは、あの女性からのメッセージなのかもしれない。
だとすれば、彼女が言わんとしていることは何だろうか。


コンタクトレンズの宣伝をするのに、敢えてメガネをかけている−。
このことから考えられるのは、彼女はコンタクトレンズ、もしくはその企業自体に対するアンチテーゼを掲げているのではないかということだ。


彼女とコンタクトレンズの間に何があったのかはわからないが、なんらかの理由があって抗議しているのだろう。
あまりにも強大なコンタクトレンズ市場、もしくは企業に対して直接的に行動するのは危険過ぎるため、こういう形でさりげなく、しかし力強く自らの思想を体現しているのだ。
私はそんな彼女に対して敬意を払いたいと思ったが、コンタクトレンズのチラシはいらないので声をかけられないくらいのギリギリの距離を上手く通り抜けた。









普通に考えれば、彼女はただのバイトなので、何とも思わずにメガネをかけていただけなのだろう。

結果として、私の思考のくだらなさだけが浮き彫りになった。
自ら掘った墓穴をまた埋める作業に、いつも手間がかかって仕方がない。