唐突に東京

朝の６時過ぎ、彼は夜行バスで新宿に着いた。
20日に横浜で行われるアジカン主催のNANO-MUGEN FES.に行くため、早めに乗り込んだのである。

早朝から行くところといえば築地市場くらいしか思い付かなかった彼は、都営大江戸線に揺られて築地市場に行った。
しかしそこは、彼のような田舎者がぼやぼや歩いていて許されるようなところではなかった。

彼は何度も市場の人が運転するヘンテコな三輪自動車にぶつかりそうになりながらふらふらと歩き、寿司屋の値段に仰天した。
しかしどうにも腹ぺこの彼は、安そうで少し行列のできていた仲屋という丼屋でうに・いくら丼を食べ、満腹になった。

市場の入口に“拾得物”のコーナーがあるのだが、昨日の拾得物が“スッポン”と“パセリ”だったのが笑えた。

築地市場を出た彼はその足で勝鬨橋と築地本願寺を見物し、銀座まで歩いて有楽町のニッポン放送を外から眺めた。
彼が愛聴しているオールナイトニッポンがここから放送されているかと思うと感動もひとしおであった。

有楽町から山手線に乗った彼は原宿へ行き、“お上りさん丸出しくん”といった雰囲気でＨ&Ｍやforever21などをみた。
テレビなどで安い安いと言われてはいたが、そのあまりの安さに彼は驚愕した。
「ダイエーとかユニクロよりよっぽど安いやんか…」
比較対象がダイエーから始まるのは田舎者のご愛敬である。

彼は他にZARAなどを見物した後、電車で井の頭公園駅に向かった。
そこに住む知人に会いに行くのだ。
そのあとは都内に住む祖母の家へ。
2泊させてもらう予定である。