失態

piedra-blanca2009-10-08

先月初めのことだった。



私は、失態を犯した。



その失態とは、簡単に言えば、遅刻である。



歯医者に、約束の時間に行きそびれた。



それだけだとよくある些細なことのように思えるが、敢えて“失態”という言葉で表現している由縁は、その遅刻の仕方にある。


順を追って説明しよう。


私は、今日の11:00に歯医者を予約していた。


そこで、10:40にその歯医者の最寄り駅に到着するように、電車に乗った。


しかし…。
歯医者までの往路の半分を来たか、という頃にふと時計を見て、気づく。



「あれ!?ん…?これ、何時?ん?ん?」


頭の中がこんがらがり、一瞬、時計が読めなくなる私。


携帯電話を取り出し、デジタルの表示を見る。


「やっぱり!もう11時前!?歯医者に着くまではあと50分もかかるのに!?」



つまり、既に歯医者に到着していなければならない時間に、私はまだ更に50分もかかるところに存在していたのである。



私は考えた。
この状況は一体何だ。


そして気づいた。
昨日調べた電車の時間が間違っていたのだ。

10:40に着きたいはずなのに、何故か11:40に到着する電車の時間を調べていたのである。


私は恥じた。
なぜ、これほどまでに“マトモに”間違ったのか。
なぜ、予約の時間を過ぎるまで気づかなかったのか。




一時間も遅刻をすれば、きっともう今日はダメだろう…。
私は歯医者に電話を入れた。


「今日…11時に予約してもらってましたよね?」
そして、その時間に着けないことを告げようとしたその時。


「え?今日は10時にお取りしていましたが…。」
受付の人の言葉が、私の心を突き落とす。



つまり、そもそも予約の時間を一時間勘違いしていた上に、一時間遅刻をしたのだ。


合計二時間の遅刻。
有り得ない。


駅で呆然と立ち尽くす私。


元々、私が思っていた“正しい時間”に着いても遅刻だったのだ。
つまり、今日はどうやっても歯医者には行けない日だったのだ。
ここまでなにもかも勘違いしていると、逆に笑えてきてしまう。


私は気を取り直し、別の日に予約を入れてから電話を切り、入ってきた改札から再び出て、ぼんやりと大阪の街へ繰り出した。



勘違いや間違いというのは、誰にでもあることだ。
むしろ、それによって無意識のうちに人生にメリハリをつけている節もあるのではないかとも思える。
と言うより、そうとでも思わなければやってられない、といった心持ちであった。