秋の宵
すっかり日の入りが早くなり、夜にもなると肌寒さを感じる季節になった。
私は三条通り商店街を西に抜け、暗がりの中を歩いていた。
すると、ふとどこからか太鼓の音が聞こえた。
小太鼓をリズムよく叩いているような、小気味よい音だ。
私が歩いて行くとその音もだんだん近づいてくる。
そして、その正体がわかった。
太鼓の音とともに、明るいオレンジやピンクの民族衣装を身に纏った女の人たちが総勢20人くらい、何やら歌いながら現れたのだ。
女の人の年齢は様々で、かなりお年を召された方もいれば、ベビーカーを押している人もいる。
私は目を疑った。
こんなものいまだかつて街角で出会ったことがなかったからだ。
インドだか東南アジアだかの行事だろうか。
京都の純日本的町並みと彼女たちのピンクだかオレンジだかの民族衣装が絶妙なコントラストを生み出していて、それでいて妙に違和感なく街に溶け込んでいたところに、私は小気味よい不思議さを感じた。
そして、日本中の街角に、こんなちょっと不思議な光景が現れまくれば人生はもっと楽しくなるのかもしれないのになぁと、なんの根拠もなく思った。