極寒年越しアルク

彼は、なんとも慌ただしい年末を過ごしている。


24日に地方の実家に帰り、就職先の内定者説明会に参加して28日にまた京都へ。
29日は大阪のインテックスで開かれたFM802のライブイベント“RADIO CRAZY”に参加し、昨日(30日)の夜に実家に帰って高校の部活の同窓会風忘年会に参加した彼は、大晦日の今日、また京都へ。


その目的は、大学時代最後の正月を京都で過ごす、というものである。


それも、伏見稲荷大社のある稲荷山から夕日を見た後に徒歩にて北上し、東山の寺社仏閣を夜通し巡って下鴨神社へ到達し、最終的には大文字山から初日に照らされる京都の街を見下ろす、という途方もない計画である。


いくらなんでもそれは無理だろう、という意見が大勢である。

他ならぬ彼自身もそう思っている。


しかし、この無茶な計画を中止するという考えは、彼にはない。


まだ暖かい日の差す午後でさえ既に寒風吹きすさび、外に出るのがやまだかつてないほど億劫になっているというのに、大晦日の今日は今年最後の日にして最も“夜、外にいるのに適さない寒さ”を記録することが多くの天気予報で言われている。


ただでさえ風邪気味で体調が芳しくない彼を家族は止めたが、それを振り切って出かけた彼は、「臨機応変な計画の変更と万全の対策が必要だ」という言葉を残した。


彼は今、コート購入以来初めて内側のもこもこをとりつけ、ズボンを2枚はき、実際の体重よりも15kgは太って見えるであろう格好で稲荷駅の前に立っている。


2010年はもうすぐだ。