さようなら、Estudiantes

9時過ぎに目を覚ました彼らは、昨日の夜遅くまでスーパーファミコンに興じてしまったことを反省しながら、鞍馬山のせいで軋む身体を伸ばしてもそもそと動きはじめた。


朝食をとり、帰る準備をし、友人Kの両親にもお礼の挨拶を済ませてなんとか午前中の内にKの家を出た彼らは四条へ向かった。


今日、四条ですることはひとつ。
カラオケである。
それくらいしか時間もないし、適度にそんな気分だったからだ。


河原町通のカラオケに入った彼らは、おもむろに学生証を提示し(実際、大学院生である友人Kは学生なのだが…)、一時間半カラオケを楽しんだ。


そうしていると、学生だった一ヶ月前までとなにひとつ変わらない自分がそこにいて、

もしかしたら、自分はまだ大学生なのではないかと錯覚する。


周りを見渡しても、目に映るのは楽しそうな学生達ばかり。


彼はなんだか、“いつものように”京阪電車で自分の部屋に帰りたくなった。


そんな彼を友人Kは、「今は夢なのだ」と諭す。


彼はその言葉を受け入れる。


「そうだ、今の方が夢なのだ。ゴールデンウィークが終われば、現実がまた始まる。」


わかってはいるのだが、信じたくない、しかし逃れようのない事実。


もしかすると彼は、それを自ら受け入れるために京都に来たのかもしれない。



京都駅の徳島ラーメン“東大”で最後のラーメンを食べ、彼とKは別れた。


一瞬だけ、同じ道をのんびり歩いていた大学時代に戻った二日間。
明後日からはまた、それぞれの道を歩み始めるのだ。