刻一刻。
病によって、ここ数日で急激に弱ってしまったりゅうは、昨日から今日にかけてもさらに弱ってしまった。
昨日は喜んで食べていた薬を食べなくなり、魚肉ソーセージにも、見向きもしなくなった。
朝は彼の弟がカツに薬を埋め込んだら食べたらしいが、昼にはもうどうやっても食べなくなり、夜には食べ物に興味を示さなくなった。
夕方に、彼の祖父と父、そして弟が連れて行った獣医によると、「食欲が戻れば、何とか持ち直すかもしれない」ということであった。
つまり、食欲が戻らなければ…。
そういうことである。
食べられなくなったら…というのは、あらゆる生き物、人間においても、そうである。
それでも、腹水を少しでもよくするためには利尿剤を飲んでもらわなければならない。
仕方なく、彼は小屋に上半身をつっこみ、いやがるりゅうの口をこじ開けて薬を放り込んだ。
しかし、りゅうは少し口をむにゃむにゃと動かし、ぽとりと薬を吐き出してしまった。
何度やっても、結果は同じだ。
もう、身体が食べ物を受け付けないのかもしれない。
彼は、すがるような思いでりゅうに話しかけた。
「りゅう、頼むから、薬飲んでくれよ…」
しかし、りゅうの顔を見て、目を見て、すべてを悟った。
りゅうにはもう、きっと何もかもわかっているのだ。
そうしてりゅうは、その運命を、“そのとき”を、ただ静かに、静かに、待っているのだ。
彼は、そんなりゅうの口をこじ開けて薬を飲ませようとしたことを詫びた。
「そうか、もう、いいんか。そうか。ごめんな。りゅう、ありがとう。」
そうして、「みんな、お前のことだいすきやで」という言葉が声にならず、なみだが溢れた。
“そのとき”は、刻一刻と迫っている。