鴨川デルタに秋の風
CDを渡すために。
ただそのために。
そうして、彼らは語り合った。
彼らの関係は、とても不思議なものである。
彼らは、“全く内容のない不毛な会話”か、
“互いの内面を削り合うような思春期丸出しの会話”のどちらかしかできないのだ。
「思春期丸出し」といっても、彼らはもう思春期ではないので、ただただ未熟さをさらしているのだ。
前者では何も得るものがなく、後者では極限まで疲れきってしまう。
そして、いわゆる“普通の会話”をするためには彼らなりの努力が必要なのである。
“努力”とは、例えば「今から、この事を話そう。それ以外の話に逸れないように。」と前置きをしなければならないのだ。
彼らは、いわゆる“友だち”という関係とはすこし違う。
それは、自分たちにもわかっているのだ。
そんな自分達の関係を、彼ら自身は“阿呆の関係”と呼んでいる。
彼らは阿呆なのだ。