二十歳

 今日は彼の20回目の誕生日である。深夜0時。彼はその瞬間を甘んじて迎えた。というより、気付いたときにはもう過ぎていた。
 とにかく彼は、二十歳になった。だからといって何か変わったことをやるわけではないが、テストの勉強をしなければ単位は自動的に落ちる。
 朝、彼はだらだらと勉強をし、昼過ぎに大学に行き二つのテストを受け、燃え尽きた。彼は「これだけやって単位取れてなかったら頭のヒューズが吹っ飛んでしまいまんがな」と今まで言ったことのない方言で呟いた。 
 夕方、彼は生協で一冊の本を買った。自分へのプレゼントのつもりらしい。四畳半神話大系というタイトルがついたその本には、八畳の小汚い部屋に住む彼には想像もつかぬほど怪しく、しつこく、男臭い世界が広がっているに違いない。おそらくテストが終わってからの楽しみとともにテストを乗り切るための原動力の一つにするのだろう。
 彼はそうそうろうろうの顔付きで家路についたが、彼を苦しめるテストはまだ、半分を数えたばかりである。

四畳半神話大系

四畳半神話大系