アヒルと鴨のコインロッカー

 彼の弟が、映画『アヒルと鴨のコインロッカー』を観るために京都まで出て来た。
 『アヒルと鴨のコインロッカー』を彼の弟に勧めたのはほかならぬ彼だ。しかしその彼以上に、彼の弟は伊坂幸太郎にどっぷりとのめり込んだ。小説を片っ端から読み、映画化された作品はほぼ全て観たらしい。

 京都シネマでの映画が終わると、彼の弟が感想を口にしだした。

「おもしろかったなぁ」
「今まで観た伊坂作品の中では一番原作に忠実やった。『陽気なギャングが地球を回す』は原作と違い過ぎたし、チルドレンは…」


彼はそれを黙って聞いていたが、彼の弟はさらに四条のジュンク堂書店伊坂幸太郎の『グラスホッパー』を買って帰ったのだと言う。おそるべし。