不意

彼は何か深く考えているようだった。
何度かうんうんと唸っていたが、小さな声で確かめるように呟きながら紙にこんな言葉を書いた。


“世界の食料不足は、我々先進国の人間が自らの功罪を省みることなく、またはそれを隠すために敢えて原因をあやふやにし、上辺だけの憐れみを向けることによってつくりだされた偽りの必然である。”


彼は立ち上がって、先生にその紙を提出した。
そして、私の横に帰ってきてからは急激に頭をつかったためかくたびれ様子で、すこしうとうとし始めた。
いつもふらふらしてるかと思えば案外こんなことを考えていたりするので、彼の内面は計り知れないところがある。