撃沈

彼は撃沈している。
今期最後のテストにして最大の難関、スペイン語?Fのテストが、全く満足のいく出来ではなかったようだ。
しかしこの場合の彼の落ち込みは、単位が取れないかもしれないという不安に起因するものではない。
“高得点が取れない”ことに対する不満によるものである。
なんという贅沢な不満だろうか。


彼は思い出した。
高校時代、平均点どころか赤点かそうでないかのギリギリのラインで闘っていたことを。
そして、入学して一番初めの中間テストの、6科目中5科目で赤点を取ったことを。
さらには、赤点の実に7分の1という点数を取ったことがあるということを。
これはもはや伝説としか言いようがないが、高校1年のとき、クラス40人の内のたった3人の男子で一年間に約30個もの赤点を取り、教師を実質的に左遷へと追いやった(かもしれない)ということを…。


彼は、こんな些細な悩みは忘れることにした。
そして、また勉強すればいいじゃないかと前向きに考えることにした。


テストを終えた彼は、そのまま電車に飛び乗った。
高校時代、赤点レースには加わらなかった男子のクラスメイトと会う約束をしたらしい。