長岡京

日曜日の昼前、彼は電車に乗って長岡京市にある天満宮につつじの花を見に行った。
昨日思い付いてホームページを見たら調度つつじが満開だということだったので、みけいぬさんを誘って行くことにしたのだ。


この四月、日曜がくる度に彼はどこかに出掛けている。ほとんど朝から晩まで、月曜から土曜までびっしりと講義を受けているのだから日曜くらいゆっくり休んではどうかと思うのだが、「週にたった一日の休みに家でごろごろしていては、頭が休日を認識する間もなく次の週が始まってしまうではないか」というのが彼の持論のようだ。元来家に閉じこもっていられない性質なのだろう。
また、休日にアルバイトでもしたらどうかという問いには「自分のことは自分が一番わかっている。これ以上心身を酷使すれば心身を崩壊に導くのみだ!これはれっきとした体調の自己管理!」とウォラォラ吠えて憚らない。


JR長岡京駅から徒歩にて天満宮に着いた彼らは、満開の霧島つつじに挟まれた道を通り抜けて境内に至った。

出店で売られていた焼きタケノコの香ばしさに感激し、持参したおにぎりを頬張る。

空は晴れ、少し霞がかった空気に柔らかな陽射しが降り注ぐ。
のんびりとした春の午後である。

境内を一通りぶらぶらと歩き、八条池に架かる橋の上でかりんとうをぼりぼりとやりながら鯉や亀を眺め、餌の奪い合いに参加できずにいる亀にかりんとうのかけらを投げてやる作業にしばし没頭し、我を忘れる。


そろそろ帰ろうかと思ったもののまだ早い時間であったので、駅でもらったパンフレットに載っていた乙訓寺へ向かうことにした彼らは、ところどころに貼られている案内にしたがって北へ。途中でアイスなどを買って食べ食べ歩くこと約30分、菜の花畑を横目に少し行ったところに乙訓寺はあった。
牡丹の花を愛して止まないみけいぬさんは興奮し、彼らは大小様々な可憐に咲く牡丹の花を思う存分愛でた。


帰り道、セブン商店街を進みながら彼は思った。「なんでこんな名前なんだろうか。でも、まぁいいや」と。
彼は、セブン通り商店街の由来よりも今日の晩御飯を何にするかということを考えることにし、一ヶ月半ほど前に食べた三条木屋町長浜ラーメンの味に想いを馳せながら家路を辿った。