ショックぐるぐる

土曜日の夕方。
この日の授業を受け終えた彼は、機嫌よく京阪電車に揺られてとある駅で飛び降りた。
その駅には、こう書いてある。
「七条」

彼は息を飲んだ。
彼の目的地は「四条」であった。


以前、「七条が四条に聞こえたら…」という、補聴器の車内広告があった。


彼はぷるぷると震えながらもなんとか平静を装い、なるべくさりげない動作で降りたホームのベンチに座った。
そして、二分後に来た電車に何食わぬ顔で乗り込み、四条へ向かった。


四条では、同じ大学の友人と落ち合った。
その友人とロフトヘ行き、新風館で雑貨屋を梯子し、先斗町の宝屋というラーメン屋で夕食をとった。
そして、疲れていて早く帰るつもりだったはずの我々はミスタードーナツでなぜか閉店時間の22時まで過ごし、友人は「くだらん話ばっかりやったけど、たまにはこういうんも悪くはないよな」などと自分を納得させがら
原付を停めた寺町御池へと向かった。


彼の友人は原付に手を伸ばそうとしたとき、「あれ?なんか貼られてない?」と呟いた。


それは、紛れも無く駐禁の輪っかであった。

彼の友人は初めての経験に大きなショックを受け、しばらくその場に座り込んだ。
しかしなんとか川端御池のあたりまで二人で泥田を歩くようにしてたどり着き、ショックを引きずったまま別れた。