スペイン国王!!

彼は、本日京都外国語大学で行われた、「スペイン国王夫妻来日記念式典」に出席した。
もちろん彼は外大生でもなければそんな式典に招かれるような身分でもない。
なぜ彼がそんな高貴なところに行けたのかは、昨日書いた。今日はその式典に臨んだ彼の報告をまとめたい。



彼は午後2時過ぎに先輩と待ち合わせて電車に乗り、阪急西院駅から西へ向かった。
ほどなく京都外国語大学にしたが、赤い絨毯がひいてあったりイヤホンマイクをつけつスーツを着た警備員がうろうろしていたり、なにやらただ事ではない様子。
想像はしていたものの、やはりその厳しい雰囲気に気圧されながら、彼は受付へと向かった。
「名簿に名前が載ってなかったらどうしよう。身分証明書は出しておいたほうがいいんかな。ボディチェックはやっぱりあるんかな。」
彼はいくつかの不安を抱えながら受付の机の前に立ったが、受付係の人は彼の予想に反して、名前を言っただけで出席を許可するリボンをくれた。
あれだけセキュリティが厳しいと言われていただけに、あまりの適当さにさすがの彼も拍子抜けした。


しかし一転して、会場に一度入ると式典の間は一切外に出られないという徹底した中途半端なセキュリティ。
入口がそれほど適当であるなら、“悪い人”でもなんでも入ってしまえば勝ちなのではないかとも思えるが、彼は特に“悪い人”ではないのでその疑問は置いておこう。


彼にも疑問の残る部分はあったが、式典が始まると彼の心はステージにくぎづけになった。
プロ(とその他諸々)のダンサーによるフラメンコショー、つまりフラメンコのショーである。フラメンとコショーで区切ってはいけないことを確認しておく。


そのあとに、いよいよスペイン国王夫妻の入場である。
予定よりも到着が少し遅れたようで、司会者の「ご起立ください」のあと5分たっても国王夫妻がこないというハプニングがあったりしながら、ついに国王夫妻は現れた。
しかも彼らが思っていたよりも近くから、想像を超える人数の取り巻きを引き連れて。


目の前に、1ユーロの裏でお馴染みのフアン・カルロス一世と、ピカソゲルニカで有名なレイナ・ソフィア美術館の名前にもなっているソフィア王妃。本物だ。
彼は興奮しながら拍手をした。
国王夫妻はゆっくりと檀上に進み、手を降りながら席についた。


そこからは、今回の式典の閉会式にあたる部分が始まった。
まず、京都外大の森田理事長による、たどたどしいスペイン語を交えた、日本語的にも少し難解な挨拶(後で彼に原稿を読ませてもらったが意味がわからなかった)があり、今年のスペイン語スピーチコンテストで優勝したという女性が「外国語を学ぶ意義」を歌い上げるようにスピーチ(彼としては違和感の残るイントネーションだったらしい)を行った。
その後、世界のスペイン語教育の中枢となるセルバンテス文化センターのお偉いさんによって今回識者によって開かれた「スペイン語の現状と未来」と題されたセミナーの報告があり、そしていよいよ最後に、国王が閉会の辞を述べた。


彼いわく、国王の言葉は、おじいちゃんのそれと同じように決して聞きやすいものではなかったらしい。
しかし、短い文章で構成されたひとつひとつの言葉の読み方やその立ち振る舞いは、さすが一国の王を思わせる貴賓に溢れていた。となんとなく彼は感じたらしい。


そうして式典は終了したのだが、彼の興奮はなかなか冷めなかった。
今回、不可能と思われた式典への出席が叶ったこと、そして本当に間近で彼の愛する国、スペインの国王を見られたことは彼にとってかなり大きな経験になっただろう。