御室の桜

彼は、めんまるさんとともに仁和寺へ赴いた。
彼にとっては二回目の仁和寺である。


四年前、彼は高校二年の冬に地元から京都、奈良へ一人旅をした。そのとき、天橋立ユースホステルで出会った夫婦の車で京都市内まで乗せてもらい、一緒に観光をしたときに仁和寺を訪れたのが最初である。

その時、目の前に果てしなく広がる背の低い桜の木を目の当たりにした彼は「桜の季節に必ずもう一度ここに来よう」と決めていたのだ。
しかし、仁和寺の桜は遅咲きで四月の上旬から中旬あたりに満開を迎えるため、彼が大学に入学以来授業などの都合で未だ行くことができていなかった。そうこうしている間に時は流れ、大学生活もとうとう残り一年となった今年、どうしても行かなければならぬという彼の強い意志により、少々時期は遅くなってしまったが仁和寺行きが強行されたのだ。



昼前、京福電車に揺られて仁和寺に着いた彼は、その堂々たる門構えとの感動の再会もそこそこに、横のスロープから中に入った。


すでにほとんどの花が落ちてしまっている木も多かったが、落ちた花びらがびっしりと敷き詰められた間から、黄色いたんぽぽが顔を出している光景は彼らには新鮮であったし、今まさに満開を迎えている桜やツツジもそこここに見られ、彼らは持ってきた弁当を食べて花見を楽しんだ。




この日は平日にもかかわらずなかなかの人出で、中には手押し車に乗って風情を楽しむ色白な方もいて、彼らを含む周りの人をメロメロにしていた。