伝染るんです

世間は新型インフルエンザ一色だ。
マスク特需で、薬局では売り切れが相次いでいるらしい。
街にはマスク姿の人が溢れている。

そして悲しいかな、それは決して「他の人にうつしてしまわないように」という精神に基づいているわけではない。
みんな「私にだけは伝染してくれるな」と言わんばかりでものものしい雰囲気だ。


ここで発生するのが、この一夜にして出現した“マスク社会"の中において、未だマスクをしていない人に対する攻撃である。
既に声に出して言われた人も多いだろう。
「人様にうつしたらどうするつもりだ。」
「なぜマスクをしていない。お前はもうアウトだ。」
例え直接言われなくとも、顔を見ればわかる。
“マスクマジョリティ"は、“ノンマスクマイノリティ"を確実に卑下している。
「私に近づいてくれるな。」という、心の声が聞こえる。
ひとつ咳でもしようものなら、犯罪者を見るような目を向けられる。


まるで“殺人ウイルス"。
ここに、“マスクファシズム"が誕生した。


しかし、ある“情報"によると、マスクは感染拡大を防ぐ効果はあるが、人からの感染を予防する効果はあまり高くないらしい。
その説に基づいて言うと、現時点でマスクをして出歩いている人のほとんどは“自分は感染していない"という前提で活動しているのだろうから、効果は薄い。
それとも、世の中は「万が一私が今保菌をしていて、知らず知らず他の人にうつしてしまっては申し訳ないから。」という高尚な精神の持ち主で溢れているのだろうか。

むしろ、マスクをしたから大丈夫だと思い込んで他の措置を講じない人が出てくる可能性もある。
これは“マスク至上説"が招く悲劇だ。
“セコムに入ったから鍵はかけなかった"というのと似ている。


感染予防に関する正しい知識を持っている人はどれだけいるのだろうか。
もちろん私も持ち合わせていないが。


そもそも日本でも、毎年1万人以上の人がインフルエンザで亡くなっているらしい。
それなのにどうして、毎年マスクは売り切れないのか?
今マスクを買っている人は、毎年インフルエンザ対策をやっていたのだろうか?
“情報”というものは恐ろしい。
この辺で、“たくさん金を使わないと感染するらしい"という政府筋の情報でも出れば、一気に景気は回復するのではないだろうか。


インフルエンザ自体は毎年流行っているのに今回だけこれほど騒いでいるのは多分、“まだよくわかっていないことが多い”のが大きな理由だろう。

インフルエンザ自体がそんなに危険なものなら、毎年学校や会社が休みになってはくれないものか。


しかし“不安”は人を突き動かす、有効な要素であることは確かだ。
通常では過剰だと判断できる行動でも、そこに“不安”が入り込むと何の疑問も抱かせずに行動させることができる。
“隣の奴が菌をばらまこうとしているらしい"と言われれば、それを阻止するために隣人を殺すことなど難無くやってのける人など、数えられないほどいるだろう。


思いつきでだらだらと書いてみたが、私の文章に、特に意味はない。
私が言いたかったことは、「インフルエンザそのものより、“新型に罹ったというショック”で死ぬ人が出るのではないか…。」というくだらない懸念と、「この時期に、インフルエンザのせいで採用活動を自粛(中止)する企業が出てきていることを憂う。」ということである。


風評被害や諸々の影響によって、人生が狂ってしまう人がでないことを祈る。