血の火曜日

強い陽射しが降り注いだ今日の午後、私は山科の病院に赴いた。
レントゲンなどの検査をしたが、半年前に行った手術の経過は実に良好らしい。

安心して病院を後にしようとしたとき、ふと、エントランスで電話をしているおばあさんが目に留まった。
私は歩みを止めずに通り過ぎたのだが、そのとき聞こえたおばあさんの会話がこれだ。


「血がね、いや、血よ、BLOODのね。」


かなり高齢とおぼしきおばあさんの口から、“BLOOD"などという単語が出るとは。
高齢者のグローバル化は私の想像以上に進んでいるらしい。


私は“人は見かけによらない"という言葉を少し思い出すとともに、「血と言えば最近蚊も増えてきたし、もう夏か…。」と季節のうつろいに思いを馳せておばあさんのことはすぐに忘れた。