のどあめ

3時間連続の授業に、彼は疲れ果てた。
精も根も尽き果てるとはこのことだ。


彼は昨日の反省点を見事に活かした。
3時間それぞれの授業でも、細かい部分を変更してより良い授業になるよう工夫を凝らした。
生徒からの突発的な質問にも柔軟に対応した。
精一杯喋ったので、喉が痛くなった。
隣にある保健室の先生から、「声張り上げてたなぁ」と言われた。
彼が授業をしたクラスの生徒が、他の実習生に彼のことを「声が大きすぎる」と言っていた、という話を聞いた。


多分、多分だが、彼は大声を出し過ぎているのではないだろうか。
そうすると彼は、明日、明後日あたりには早くも声が出ない状況に陥るのではないか。
しかし彼は、声を調節する術を知らない。
知らないまま、大声を張り上げ続ける。
もしかすると彼は、ブレーキの無い車に乗ってもアクセルを踏み続けるくらいの阿呆なのかもしれない。