国民体育大会

彼が弟からどうでしょうグッズをもらって歓喜し、のほほんと日曜日を過ごしている間、彼の弟は地元に帰ってきた本来の目的を果たしていた。


そうなのだ。
彼の弟は、彼にどうでしょうグッズをあげるために帰ってきたわけではない。
本来の目的は、"試合"である。
試合といっても、相手と向かい合って攻防を繰り広げたり、殴り合ったりする競技ではない。

ひたすら黙々と的を射抜く、自分との闘いである。


彼が教育実習の授業の準備もせずにほほんと過ごしている間、彼の弟は黙々と自分と闘っていたのだろう。




ついに、彼の家に国体選手が誕生した。



第一回、二回予選では思うような結果が出ず、不利な状況で今日の最終予選に挑んだ。
そして今日彼の弟は、不利な状況と大方の予想を見事に覆し、予選を突破した。
そしてとうとう、国体の県代表切符を手にしたのだ。


「夢のようだ」と、彼は自分のことのように喜んだ。
彼の弟に対する溺愛ぶりは、この先もとどまることを知らぬまま走りつづけそうである。