色づくまま そのまま

彼は高校時代の同級生と、同じく高校のときの図書館の司書さんと夕飯の席を共にした。
その同級生とは、図書専門委員会なる部活で本来の活動そっちのけで政治論に明け暮れた仲だ。
その仲が浅いのか深いのかは私には計ることができないが、良くも悪くもそういうことで、高校卒業後に意図して会ったこともなかった。


その同級生も、大学で出会った年上の彼氏ともう三年ほどになるらしく、司書の先生も、今や三歳の子の母親だ。
容赦なく時は流れ、それぞれの人生が等しく進む。
彼はそれをしみじみと感じながら、高校時代には決して互いに話すことのなかったであろう話に花を咲かせた。


彼女が、当時好きだった人に一言「好きです」と言うために広島まで行ったという逸話に驚き、現在の彼氏への不満を別の男性に逃げることで晴らしている(彼女は「癒されている」という表現をしたが)という話に閉口した。
彼も彼で聞かれたことには包み隠さず答え、「草食系だ」とか「優しい」と言われたかと思うと「ゆくゆくは知事になれ」と言われるなど、わけのわからない展開を見せたりもした。

司書さんの過去の恋愛についての話も聞き、時間はあっという間に過ぎた。


帰り道の自転車が静かに揺らした夜の空気は涼しく、彼はなんだか人恋しくなってペダルを漕ぐ足に力を込めた。