ラッシュライフ

ラッシュライフ
その名の通り、rushな人々のrashな人生がlushに入り組んでいる。

ラッシュライフ (新潮文庫)

ラッシュライフ (新潮文庫)

泥棒を生業にする男。
父に自殺され、宗教に傾倒する青年。
不倫相手の妻を殺し、再婚することを企むカウンセラーの女性。
職を失い、面接40連敗中の中年男性。
それぞれの人生が、慌ただしく入れ代わり、繋がってゆく。


読んだあと、「なるほど」という気持ちになるのは井坂作品の特徴だ。
「アレはこのことだったのか」と。


そして気づく。
「あれ?やっぱり何も解決してないんじゃないか?」
おかしなことは次々と、それはもうrushにまき起こるのだが、それでもやっぱり、読者はそれぞれのrashな人生の一部を覗かせてもらっているだけで、本が終わったあとも"life goes on bra"…彼らの人生は続いていくのだ。



この『ラッシュライフ』において、深い感銘を受けた言葉がある。


泥棒の黒澤が、たまたま出会った大学時代の友人である佐々岡に向けて言った、
「でもな、人生については誰もがアマチュアなんだよ。」という言葉だ。


誰だって初参加。
誰だって新人。


そうか、人生にプロフェッショナルなんていないのだ。


黒澤は続けて言う。
「はじめて試合に出た新人が、失敗して落ち込むなよ」


なんだか、心の枷が一つとれた気がした。


"here comes the sun it's all light"