宵々山の蟷螂
彼は、大学の先輩とゼミの友人と待ち合わせ、昨日に続いて今日も宵々山で賑わう四条界隈に出かけた。
昨日よりも時間が早いこともあり、四条通に溢れる人の波はまるで海のようである。
人は多いが、爽やかな風が通り抜けていくのが心地良い。
彼らは四条通を西洞院通まで西漸し、北へ折れた。
目の前にそびえるのは、妖しくうごめくカマキリを冠した蟷螂山である。
彼らは、あまりにリアルなそのカマキリにあっけにとられ、しばらく言葉もなく見つめていた。
我に返った彼らは、夜店で200円のどんどん焼きを買って食べた後、黒主山や鯉山、橋弁慶山などを巡って見物しながらコンビニで買った梅酒を飲んだ。
彼が特に気に入ったのは蟷螂山と鯉山、そして月鉾である。
友人の一人は「家族に頼まれた」と言って函谷鉾と蟷螂山で粽を買っていたが、“粽を買う”という概念に彼は初めて意味を見出せた気がした。
明日はついに宵山である。