Valencianos

piedra-blanca2009-07-25

彼が友人と二人で先斗町を抜けたとき、数人の外国人が話しているのが聞こえた。
外国人の言葉に耳を傾け、何語を話しているのかを探るのは彼の癖だ。


その人たちは、どうやらスペイン語を話しているようだ。
スペイン語好きの血が疼く彼。



外国人たちは王将の前に停めてあったレンタサイクルにまたがる。
彼はなんとか話しかけるタイミングを計っていたが、なかなか話し掛けられない。
タイミングを失ったまま外国人たちを追い抜いてしまったところ、ちょうど自転車の前を塞ぐ形になってしまい、外国人の一人が“ちりんちりん”とベルを鳴らしてきた。



「今や!!」



彼は心の中で叫び、相手に聞こえるように「iPerdon!(ごめんね!)」と言った。


外国人は驚きながら、「Perdona(あーごめんねー)」と返す。
まさかスペイン語で返されるとは思ってもみなかっただろう。


ここまで来れば、彼の思う壷だ。
「どこから来たの?」
バレンシアだよ。」
「あーバレンシア!いいねー。行ったことあるよ。」
「マジで!?どうだった?」
「Las Fallasに行ったんやけどね、めっちゃよかったよー。」
「そりゃよかったー。」
「iAdios!iBuen viaje!(じゃーバイバイ!良い旅を!)」
「iGracias! iAdios!(ありがとー!じゃーねー!)」




スペインたち人に手を振って歩き出す彼。
横で聞いていた友人が、「え、今の人知り合いやったの?」と尋ねる。
彼は「いや、全然知らんよ」と答える。
友人の顔が一瞬にして“ちんぷんかんぷん”になるのを尻目に、彼は言い知れぬ満足感を味わった。




それにしても、外国でどこから来たか尋ねられて「スペイン」ではなく「バレンシア!」と答えるあたりが、地域色の強いスペイン人らしい。
日本人が外国でどこから来たか尋ねられたら、普通、まず地方の名前を言ったりしないだろう。
堂々と地方の名前で言える地元愛と知名度、そしてそれに裏付けされた自信が、なんだか羨ましくなった彼であった。