腹痛クロニクル

我々はしばしば、急激な腹痛に見舞われることがある。


それは実に急で、そしてあまりにも呆気なく、大の大人を窮地に追いやる力を持つ。



何も考えられない。
深刻な顔をして、ただ自我と腹との闘いを、冷や汗の流れるままに見守るのみである。


そうなってしまえば何もかも投げ出してすぐにでもトイレに駆け込みたくなるものだが、そうそう都合よくトイレが近くにない、というのが世の常である。


そうなると、人間は冷静さを失う。
このまま尻の穴に力を入れつづける苦痛を考えれば、いっそ全部出してしまったほうがよっぽど心身にとっていいのではないかという考えに頭を支配されてしまうのだ。


それに伴う社会的身分の喪失など、些細なことだという考えにさえ駆られる。
しかし、その考えのままに行動することは、結局は“自分に負ける”ことを意味する。



それは、無実の罪で捕まった人が、執拗な拷問に耐え兼ねて白状してしまうような心情と似ているかもしれない。



違うか。