卒論提出

彼は、自分との激闘の末、なんとか締切までに卒業論文を完成させた。


思えば、長いようであっという間の道のりであった。


「早く始めなければならない」と思い、本を借りておきながらも全く手をつけなかった夏。


資料集めに着手しながらも、不意に友人と鳥取に旅立ったり、自転車で卒論からの逃避行を図ろうとした秋口。


いよいよ本格的にヤバイということになり、友人とパソコンに向かうも中味の無い会話だけを積み重ね、毎日ほとんど何もせぬまま夜を迎えた秋。


友人と「卒論を書くときは会わないでおこう」という誓いを立て、一人でパソコンに向かうものの、やたらとニュースばかりチェックして時事問題に詳しくなったばかりか、ラーメンズの動画に心奪われて結局あまり何もせぬまま日々を終えた初冬。


やっと本腰を入れて書き始めたかと思った頃に、風邪を引いてしまった11月下旬。



それらが積み重なって、彼の卒論は完成した。


メキシコの「マキラドーラ」という、“マニアックな上に彼の手には負えないほど難しい分野”を取り上げてしまったため、最後の方にはもう彼自身も何が言いたいのかわからなくなったりもしたこともあった。

しかし、とにかくできた。
良くも悪くも、これが彼の卒業論文だ。


大学事務に論文を提出する際に事務員と一悶着ありはしたが、なんとか無事に提出することもできた。



彼の大学生活も、あとわずかである。