寝過ごす。

piedra-blanca2010-01-08

彼はふと気がつき、時計を見てハッとした。


20:58



明日朝から就職先で開かれるセミナーに出席するため、彼は今日19:51発の電車に乗って地元に帰る予定であった。


時間を決めていたのは、駅まで迎えに来てもらう約束をしていたからである。



彼は19:51の電車に乗るため、16:30に大学から家に帰り、帰る用意をしてご飯を食べ、風呂にまで入った。


それでも、家を出るまではまだ30分ほどの余裕があった。



それが敗因となった。


「あと30分くらいしたら家出るかぁ…」



彼の最後の記憶である。




気がつけば、21時を目前にして、ベッドから起き上がった自分がいる。



「…え?」



寝起きで、状況が飲み込めずにポカンとする彼。


その顔はまさに、バルセロナグエル公園にあるトカゲ(ガウディ作)のようであったという。




なお、数秒後にグエル公園のトカゲから人間へと復帰した彼は、ものすごい速さで家を出て電車に飛び乗り、なんとか終電までには帰り着けそうな気配である。



それにしても、19〜21時までの約2時間、彼に一体何があったのだろうか。



彼はただ、「こんなことってあるんか…」という言葉を心の中で反芻しながら、仕事帰りのサラリーマンで混み合う電車に揺られている。