後悔もどき。
お昼に証券外務員2種の試験を終えた彼は、すっかり肩の荷がおりた気持ちになった。
彼は今年に入ってからほぼ毎日、それに向けた勉強ばかりやっていたのだ。
もし落ちていればもう一度受けなければならないのだが、ひとまずそのことは忘れた。
まずは大学に行って友人Kと会い、わからずやでプロ意識の欠落したメディアルームのバイトと闘い(最終的には怒鳴り合いになった)ながらキューバとメキシコの「地球の歩き方」をコピーした。
そして「地球の歩き方!?なにそれ?今、俺、地球、歩いてるけど…歩き方あんの!?地球!?」と真面目に尋ねる友人Kとともに部屋に帰ってウイイレをした。
ウイイレを始めたのが17時前。
時計を最後に見たのが18時半。
今日の敗因は、そこにあった。
彼がふと時計を見ると、なんと21時半。
彼らは大いに後悔した。
「まだ19時半くらいやと思ってたのに…。」
ひとしきり後悔した後、“どこで晩ご飯を食べるのか”という会議を30分ほど行い、十条にある“めいもん”というラーメン屋に決めた。
ラーメンを食べてしあわせな気持ちになり、店を出たのが23時半。
ここで、訂正を行いたい。
今日の敗因はゲームをしすぎたことであると前述したが、
真の敗因は、この後にあった。
彼らは、晩ご飯を食べた後、語り合ったのだ。
何の意味も内容も無い、くだらないことを。
2時間も。
外で。
氷点下の外気の中、彼らは寒い寒いと言いながら、話を終わらせる気配が無い。
今日の出来事や他愛の無い話をしながら、互いに相手の言葉の揚げ足を取ってどんどん話をわけのわからぬほうへと向かわせる。
気づけば“友人Kのおばあちゃんを主役にした映画”の構想が進んでいた。
しかも、四部作の超大作が。
手足の感覚は凍り付き、寒さのせいでずっと力が入っている肩はこりにこっている。
本当に、阿呆としか言いようが無い。
一体何故、こんな無駄なことをやっているのか。
彼ら自身、そのことを悔やんで“一体どうしてこういうことになったのか”について振り返り、反省を試みてはいるのだが、いかんせんそこからまたあらぬ方向に話がそれてまた無意味に時間が過ぎ、そのことをまたもや反省しようとして堂々巡り。
結局、彼らは後悔と反省を分かち合い(あるいは後悔と反省をするふりをして)、午前1時半に別れた。
極寒の中でそんなことをしていたのに二人とも風邪をひかなかったことが、唯一の救いである。
まぁ、これはこれでいいのだろう。
彼に残された大学生活は、もういくばくも無い。