卒業。

piedra-blanca2010-03-18


彼が大学を卒業した。


4年というのは長いようであっという間で、振り返ると、今ここにある。


そのひとつひとつの思い出を“大学時代”という箱の中に丁寧にしまって、フタは閉めずに傍らに置いておく。


それが、大学を卒業したことに対する彼の心境である。


いつか、箱のフタを閉める日もくるだろうし、箱ごとどこかにしまい込んで、ごくたまに思い出しては引っ張り出すのに苦労する日もくるだろう。


しかし今の彼にとって、振り返るとすぐそこにある“大学時代”はまだ、いつでも箱から取り出して眺められる存在でなければならないのだ。




彼は、卒業式のあと、サークルの後輩から予想外の寄せ書きをもらい、教職免許を3枚(高校地歴・公民・中学社会)受け取り、経済学部であるにもかかわらず経営学部の謝恩会に行き(彼は経営学部のゼミに所属していた)、家に帰って着替えたあと、四条へ赴いてゼミの飲み会に参加し、何度目かのカラオケオールをした。


そうして、かれは卒業した。
“実感がない”という実感だけが、今の彼にはある。



藍色の空。