解放から、間髪入れぬ精神拘束。
本日をもって、監獄のような研修が終わった。
本来ならばうきうきした心持ちでスキップでもして帰りたいところだが、研修最後の内容が、彼の心をどん底に落とし込んだ。
次々と襲い来る資格試験、競争社会意識の徹底、進退に直結する人事評定…土日も、自己啓発という名の“タダ働き”をしない者は、どんどん蹴落とされてゆく。
そしてそこに人事からの、追い撃ち。
「試験は、落ちるのならば受けるな」
そろはあまりにも酷ではないだろうか。
それらの話を聞いた彼の心は鉛のように重くなり、変な汗をかきながら、泣きそうにさえなった。
そして彼は、こんなことを思った。
「資格試験とか、自己啓発とか、そういうのほんまに嫌い。心重くなる。一挙一動すべて競争。吐きそうになる。やっぱり銀行員にはむいてないかも。 」
ところが、次の日になると「まぁやれるとこまで頑張ってみるかー」と、ほとんど気を持ち直している様子である。
“心配性だが楽観的”
ふたつの相容れなさそうな性格が汽空域のように混ざり合った人間、それが彼である。
ただ単に忘れっぽいだけだという厳しい指摘もあるが。