内部爆発型虫歯
梅雨の合間の晴れ渡った土曜日。
彼はかねてより悩まされていた疼く奥歯をなんとかしてもらうため、歯医者へ向かった。
そして、言われた。
「これは内部でかなり広がってますね。神経にもかなりかかってるので、神経を抜かなければ。」
かくして、彼の奥歯は削られた。
あとで歯医者が見せてくれた写真によると、彼の奥歯には阿蘇山のカルデラもかくやというほどの大穴がぽっかりとあいていた。
聞くところによると、最終的にはこの写真より二回りほど大きい穴になったらしい。
そうして歯医者から出てきた彼は今後、無神経な奥歯を持つ男として生きてゆくのだ。
この先、もし彼が無神経な発言によって誰かを困らせることがあったとしたら、それはきっと彼の右下の奥歯から発せられたものである。