23°Cumpleaños

piedra-blanca2010-07-24

23回目の誕生日を、彼はめんまるさんと過ごした。


彼の誕生日が運よく土曜日と重なった今年、めんまるさんはその日に休みを合わせてくれたのである。



朝、電車に乗った彼らは大阪港に向かった。
言わずと知れた大きな水族館。


彼らの目的は、愛らしい肉球コツメカワウソ、落ち着きのないラッコ、何も考えていなさそうなペンギン、のんびりした動きのアザラシ、そしてかわいい口のエイである。


コツメカワウソは、昼寝から起きるとえさの時間を待ちわびてずっとそわそわしていた。


ラッコは、毛繕いをしながらぐるぐるぐるぐる回り続けていた。


ペンギンは相変わらず何も考えていなさそうにぼんやりしていた。


アザラシは、スピーディーに泳ぐアシカを尻目にのんびりとふわふわ泳いでいたし、エイはやはり意外とかわいかった。



彼らはコツメカワウソのせわしなさに圧倒され、カピバラのもさっと感に苦笑し、エイの口を真似し、「ラッコが三分の一のサイズなら飼いたいのに…」などとと思いながら二度ずつ見た。
そして、一度全部回った後、もう一度入り直してまた見た。


折しもその水族館では頭に魚の縫いぐるみを被った声の高い中年男性がバーチャルにガイドする“鮫の博覧会”なるものが催されていて、思いがけずエイに触ることができた。


エイの背中は大方の予想に反してぬるぬるぷにぷにしていて、「鮫肌ちっく」と予想していためんまるさんは初めて触ったっきに「ひやぁ!」と悲鳴と感嘆の入り混じった声を上げた。



水族館を出た彼らは梅田へ向かい、公開中のジブリ映画「借り暮らしのアリエッティ」を観た。

あまりにあっけなく終わったので肩透かしをくらった観客も多かったのではないかと予想されるが、めんまるさんにとっては、小さい家具や食器や食べ物、そして水の張力の表現などなど、心を掴んで離さない要素に溢れていた。
そのためめんまるさんの評価は「最近のジブリの中では一番好きかもしれない」という高いものであったが、「最近のジブリ」というのがどの作品からを指しているのかは定かではない。



夜にはたまたまやっていた天神祭に顔を出し、なんとなく雰囲気を楽しんだ後、たまたま行った梅田のスペインバルで高校時代の友人が働いていて驚きすぎた彼は、テキーラをショットで飲んでも全く酔わなかった。


こんな偶然があるのだろうか。

こうして、彼はめんまるさんのおかげで素晴らしい誕生日を過ごした。


この日を楽しく過ごせるようにプランを立て、彼の機嫌を損ねぬよう、先回りしていろいろと策を尽くしてくれためんまるさんに、彼は今一度感謝すべきである。