ゆとり。
至福の早帰り日。
帰り道で、昨日帰省してきた弟に服を買ってやる。
いい兄っぷりを遺憾無く発揮する彼。
湿った空気がゆっくり動き、空を見れば雲の切れ間から陽が差している。
悪くはない。
漫画を一冊買おうと、少し遠回り。
時間にゆとりがあるのはよいことだ。
心にも余裕ができる。
複合型商業施設の本屋に入り、目当ての漫画を見つける。
そこで、彼はある問題に直面する。
そして結論を出す。
「500円も、持ってない。」
財布にゆとりがないのは悲しいことだ。
心にも余裕がなくなる。
しかし、彼は見つけだした。
鞄の奥底、銀行の封筒に入った小銭を。
彼は、駄菓子屋に行く小学生の如くその小銭を握りしめ、レジにならんだ。
心にゆとりを。
課題は見ぬふり。