友人K
彼にとっては23度目、友人Kにとっては2度目の献血である。
右腕から血が抜かれ、血漿が分離して残りが再び右腕から返ってくる。
それを四回繰り返す途中で彼は、看護師さんに、ここのところ気になっていたことを相談してみた。
働き初めてから二回行った献血において、糖尿病チェックの指数である“グリコアルブミン酸”の数値が以前より高くなっていて、危険値すれすれになっている、という不安である。
四六時中ラムネかグミか、さもなくばパンやごはんが口に入っていた学生時代とは比べものにならないほど、甘いものの摂取量は減っているはずである。
酒もほとんど飲まない。
看護師さんとの話しから推察すると、どうやら原因は二つ。
運動不足とストレスである。
彼の就職前後で大きく違い、しかも悪い方に変化したと思われるのは、それしかない。
特にこれといって運動はしていなかったが、なんだかんだでよく歩き回っていた学生時代から比べると、原付きにばかり乗り、仕事以外に動いていない今は、有酸素運動の量が格段に減っているだろう。
ストレスに関してはいわずもがな。
0だったものがいきなり常にメーターを振り切らんばかりの状況で働くようになったのだから、心身ともに負担は大きいのだろう。
さあ、どうしたものか。
献血後にKとラーメンをすすりながら、彼は健康について少し考えた。
そして、大阪の祖父の家に行くKとともに阪急電車に乗り、先日「遠いから休みの日に行ってこい!」と上司から言い渡された、城東区にある担保物件の写真を撮るという仕事を遂行した。
そんな彼の理不尽な仕事に理不尽に付き合わされた友人Kは嫌な顔をしながら文句を垂れ流したが、そのおかげで彼はあまりストレスを感じずに任務を終えることができた。
夕方になると風が少し涼しく、夏も終わりに向かっているようである。