田舎

piedra-blanca2010-11-28


知多半島の先っぽで目覚めた彼らは、朝から自転車に乗って出かけた。
時刻は8時半くらい。


近くのコンビニで朝食のおにぎりを買い、少し走るとすぐに海に出た。


海岸沿いの道は走りやすく、海は朝の陽を浴びて細かく光っている。

いい天気で風もなく、弟に借りた“マサミ号”はスイスイ進んだ。

ただのママチャリである“マサミ号”がそんなにスイスイ進んでいるのだから、弟が乗っている赤い彗星のようなロードバイクは、その数倍スイスイ進んでいると思われた。


10分ほど行くと、野間灯台に着いた。


青空に灯台の白が映えて美しい。

彼は、卒業旅行で訪れたキューバのマレコン通りを思い出した。


あれが、まだほんの10ヶ月前のことだとは…。


あぁなつかしいなぁ、切ないなぁ。
も一度キューバに行きたいなぁ。
あぁなつかしいなぁ、おいしいなぁ。
角煮のおにぎりおいしいなぁ。
おいしいなぁ、おいしいなぁ、もぐもぐ…。

彼らは、さっき買ったおにぎりを食べて腹ごしらえした。


砂浜には、レトロなテレビが、まるでそこが正しい居場所であるかのように堂々と鎮座ましましていた。


その後、彼らは近くの土産物屋で南知多のお土産をいくつか買い、来た道を戻って、建設が頓挫したままほったらかされている駅や野間大坊などを訪れた。


道を走れば牛の臭いがし、民家には大根や玉葱などが吊られている。

オリエンテーリングでもしているのか、ところどころでボーイスカウトらしき少年達も見かけた。

“のどか”という言葉が相応しい、まさにそんなところであった。


スーパーによって彼らはまた弟の部屋に戻った。
のどかすぎてもう特にやることがない。
早めに昼食を済ませた彼はさっさと帰ることにし、弟に駅まで送ってもらって昼過ぎの電車に乗った。


そうして彼は、弟の住む“ど田舎”に別れを告げ、自分の住む“片田舎”へと、家路に着いたのである。