突発的仲里依紗症候群
年始休みの間、彼はいくつか映画のDVDを観た。
ひとつめは『サマーウォーズ』である。
これまでにもう何度も観ていたが、なんとなくまた観たくなった。
言わずもがな、非常に面白い、良くできた映画であった。
サマーウォーズ スタンダード・エディション [Blu-ray]
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ふたつめは『純喫茶磯辺』。
これも先日観たのであったが、サマーウォーズにちょい役で声優として出ている仲里依紗氏が主役で出ているので、また観たくなったのだ。
そう、お察しの通り、彼は仲里依紗氏のファンである。
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『純喫茶磯辺』は、ほのぼのしていそうなその名前からは想像も付かないようなぐにゃぐにゃした映画であり、彼は二度目もなんとなくげんなりしながら観終えた。
それでも観終わった後にのほほんとした暖かさを感じるのが、この映画のすごいところであり、宮迫氏の演技の賜であり、なんと言っても仲里依紗氏が輝いているおかげである。
彼は映画を観ながら仲里依紗氏を絶賛し、不意に高まってしまった仲里依紗熱を下げるために、近くのレンタルショップヘ行って、解熱剤、もといDVDをもう一本借りた。
彼は解熱剤などとうそぶきながら、「熱が高まった今、この衝動に任せて借りに行くしかない!」と本音と思われることも漏らしていた。
『時をかける少女』
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そもそもアニメ版からの「時かけ」ファンである彼は、去年の春にこの実写版「時かけ」が劇場公開されたときから気になっていたのだが、なかなか機会がないまま時間が経ってしまっていたのだった。
彼は弟たちに向かって、「何を隠そう、アニメ版“時かけ”のときから仲里依紗のファンだったのだ!」とウソかホントかわからない上にどうでもいいようなことを何故か胸を張ってアピールしたが、誰にも聞いてはもらえない。
実写版の『時かけ』は、彼の予想を遙かに凌ぐ面白さで、“いつもとあまり変わらない感じなのにもうどう見ても1970年代の人にしか見えない”中尾明慶氏などの演技にも素晴らしいものがあった。
しかし、彼の主張はこうだ。
「時かけの内容が面白かったかどうかが問題なのではない!論点は、“仲里依紗が良かった”という、その一点に尽きる!」
もはや変態さんの域にずぶずぶとのめり込んでいくような発言であるが、彼のしたり顔から察するに、そんな発言をしてみんなから「この変態め!」と戒められるのを待っているような気がしたので、敢えて誰も何も言わなかった。
それにもめげずに仲里依紗氏を絶賛し続ける彼に、知多半島の先っぽから帰省中の弟が、鋭いメスを入れる。
「仲里依紗って、AKBの誰なん??」
もはや、彼もなんと答えたらよいのかわからなくなった。
まず、仲里依紗氏はAKBとは何の関係もない人であると思われる。
その上で、もし仮に仲里依紗氏がAKBに所属していたとするならば、“AKBの仲里依紗”であって、彼の弟が発した“AKBの誰”という質問は何を導き出そうとしているのか、根本からよくわからない。
つまり、3年前、入居程なくしてテレビが映らなって以来テレビとは無縁の生活を強いられてきた彼の弟は、その両方のことをまったく知らないのである。
余談だが、そんな彼の弟はその後ネットの世界の住人となり、実在するアイドルや女優には疎くなっても、二次元の世界についてはやたらと詳しくなってしまっているので接する際には注意が必要である。
そういった訳で、彼は一日に3本も仲里依紗氏が出ている映画を観た。
そうしてその感想(主に仲里依紗氏の良さ)を、正月から毎日仕事に行っているめんまるさんに余すところ無く伝えようとして邪険に扱われたり、軽くあしらわれたり、そういう一日であった。