彼の恐縮
今日は丸一日、研修であった。
対象となっているのは“外交に出て一年以内の人”ばかりで、入行して2〜5年の人、とりわけ去年入行した彼の同期が多い。
午前は講義形式の座学、午後はみんなの前での発表を含むグループワークを行ったのだが、それを終えたところで、彼は同じグループだった同期からこんなことを言われ、恐縮した。
「○○くんがこんなに面白かったって知らんかった!!」
どうやら、彼の発表を見たその同期の中で、彼の評価がいい方向に転がったらしい。
さらに、こんなことをいう人まで現れた。
「一年目のときに面白さに気づかんくて損した!!」
銀行員二年目にして、彼の“おもしろさ”の評価はうなぎのぼりだ。
中には、こんな疑問をぶつけてきて彼を辟易させるものもいた。
「一年目のころからこんなに面白かった??」
答えは、「ノー」である。
彼は気心の知れない人に対して面白いことを言ってやろうなどと考えることはしないし、グループワークの内容によって得て不得手もある。
今日のように彼が脚光を浴びる現象は、
1.彼の体の調子がいい
2.一年経って、接し方に慣れてきた人々が相手である。
3.研修の内容が、彼の得意な(あまり頭を使わない)内容であった。
4.なんとなく受け入れられそうな気がした。
という特異な条件が重なったときにしか起こらない、非常に稀有なことなのだ。
彼は無口でもなければ暗くもないし、のんびりした性格でもなければ、残念なことにまじめでもない。
しかし、往々にして初対面の人が彼に対してそういった印象を持ちやすいのは、彼に“集団の中に入ると自分を隠そうとする癖”があるからである。
思えば、高校のときもそうであった。
彼の友人に聞いてみても、一年のときの彼の印象がほとんどないのだ。
高校が二年目くらいから楽しくなり出したのは、彼自身自覚しているところである。
その性質は、どちらかというと損なのではないかと私は思う。
しかしまぁ、出会っていきなり面白いほうがいいかと言われれば、それもちょっとどうかと思う。
したがって、彼にはこの先も、“仲良くなったら面白い人”であってほしいというのが、私の個人的な見解である。
彼の面白さに気づくためには、仲良くなるまで根気よく付き合ってみることをおすすめしたい。